ボストンの歩き方

2016年MIT入学の学部二年の日記帳

シュテファンとボルツマン

みなさん、ボルツマンという名前を聞いたことはあるでしょうか。

 

この人は19世紀後半に活躍した物理学者で、ボルツマン定数であったりボルツマン方程式であったりボルツマン分布であったりと物理のあらゆるところに出てきます。一番有名な業績の一つに近代の統計力学を作り上げたことではないでしょうか。比較的昔から発展してきた熱力学という学問があります。これはPV=nRTという期待の状態方程式に代表されるように、気圧を上げたら温度はどうなるの?などのようにマクロな視点からある操作を行うとどのような変化が起きるかを調べた学問です。統計力学はこの熱力学で導出されている定理たちを、原子や分子というミクロな視点から説明するという、いわばミクロとマクロの架け橋的な学問です。

例えば統計力学の重要な帰結に、ある状態の存在確率がその状態のエネルギーに依存しているということがあります。この事実は生物物理でもよく出てきます。例えばイオンチャネルというものがあります。これは細胞膜にあいているトンネルのようなもので、開いていたり閉じていたりします。じゃあ全部のイオンチャネルのどれくらいが開いているのだろうと思った時、実は空いている状態と閉じている状態でのエネルギーが分かれば(厳密には二つの状態のエネルギーの差さえわかればよい)、実は空いている確率が簡単な計算で求められるのです。エネルギーと確率がつながってるって結構すごいですよね。

 

ただ僕が初めてボルツマンという名前に出会ったのはボルツマン定数やボルツマン方程式など、よく使う物理概念ではありませんでした。高校時代、教室にいくと床に駿台の東大模試の解答が落ちていました。それを友達とパラパラ見ていた時、ふと、地学ってどういうものが試験に出るのだろうときになり早速地学の解答のページに飛んでみました。そこで一番最初の問題の答えが「シュテファン=ボルツマンの公式」だったのです。これは黒体のエネルギーがその温度の4倍に比例するという定理なのですが、そんなことを知るはずもなく、ただ語感のよさに惚れてしまいました。それ以降友達との会話でシュテファン=ボルツマンという単語がプチ流行しました。ゲシュタルト崩壊が流行っているのと同じノリですね。

 

こんなしょうもないノリで覚えた言葉も、将来意外と役に立つよというお話でした。

 

では、