ボストンの歩き方

2016年MIT入学の学部二年の日記帳

専攻について

今日友人に会いにマイアミまで下りて行ったところ、帰りの最終電車を逃しとんでもない距離をUberで帰ってきました。反省せねば。

 

さて、大学生になって人と初めて会った時の自己紹介でいうことベスト3は名前、大学、専攻だと思うんです。ただ専攻の概念は日本とアメリカの大学で結構違います。今日はそこら辺について説明していこうかなと思います。

 

1. アメリカと日本の違い

日本の大学の場合、受験時に受験する学部を選びます。入学後に学部からさらに専門に細分化されたり、あるいは他の学部に変えることができる、という場合は多々ありますが、基本的には高校3年生の段階で専攻の大枠はほぼ決めてしまうわけです。

 

これとは対照的に、アメリカの大学では入学時に専攻は決まっていない大学がほとんどです。大学入学時にはみな専攻のない状態で入り、一年生の後半から二年生にかけて専攻を決めるというわけです。この制度は単に時期的な違いだけにとどまりません。

i) 複数の主専攻、副専攻を持てる

 学部に入学する、という日本と違い、入学した後素の専攻に必要な授業をとれば専攻を認められるという制度のため、がんばってしまえば複数の(主)専攻を持てるわけです。さらに、副専攻(minor)といって、主専攻(major)に必要な授業の一部をとることで認められる学位を取ることも可能です。

ii) 専攻を途中で変えられる

 先ほどと同じく、卒業するまでに必要単位を取り切ればいいので、専攻はいつでも変えられます。例えば3年生になって専攻を変えたくなり、卒業を一年先延ばしにして別の専攻の授業をとりきる、という友人もいました。

iii) 専攻ごとの人数制限がない(場合が多い)

 日本は学部ごとに入学選抜が行われることがほとんどなので、専攻(学部)ごとの人数はあらかじめ設定されています。これに対して(一部の大学の人気専攻に設定されている人数制限をのぞけば)多くの大学では一つの専攻に何人所属してもよいようになっています。

 

2. MITの場合

MIT生にランダムで専攻を聞いた場合、半分以上の確率で Course 6という答えが返ってくると思います。これはMITの特徴が二つ出ている回答のように思えます。

 

まず一つは専攻の呼称です。MITでは専攻名はみな数字で呼んでいます。そっちの方が早いですからね。

例えばメジャーどころでいえば、2: Mechanical Engineering(機械工学)、6: Electrical Engineering and Computer Science(電気電子工学/計算機科学)、9: Brain and Cognitive Sceince(脳・認知科学)、20: Bioengineering(生物工学)、24:Philosophy and Linguistics(哲学/言語学)などです。他にもたくさんの専攻があるのですが、ところどころに欠番があり、たとえば13,19などはありません。昔あった船舶工学が機械工学に合併されたりしたことが原因だそうです。また、MITといえば理系というイメージが強いですが、文系の専攻も数多くあり、特に外国語のクラスはほとんどの人がとるほど人気です。

 

もう一つのMITの特徴が、半分以上の生徒がCourse6だということです。みな様々な専攻を考えて入学してくるわけですが、やがて専攻を決める時期になると多くの人がCS(Comupter Science)に決めるのです。これには複数の理由があるように思います。まず一つ目は、お金。げすい話のようにも聞こえますが、例えばスタートアップなどをしたい人、FBやAppleMicrosoft等大手企業で働きたい人にとってCSのスキルというのは今の時代必要不可欠なものになってきています。また、CSの汎用性の高さも原因のように思われます。将来どのような職種につくにしろCSができて損することはないからです。例えば生物学をやるにしろ得られる膨大なデータをどのようにプロセスするかなどはCSの知識が大事になってくるわけです。

 

3. 僕の場合

MIT出願時、僕は5/7のdouble major(二つ専攻をもつこと)をしようと考えていました。化学と生物学です。しかし、一年生で様々な体験をしていく中で、何かハードスキルを身につけたいと思うようになりました。一年生の間に様々な生物学の授業をうけるなかで、自分がこれを学んでいるという感触が少なかったように感じます。もちろん新しい反応を覚えたり、新しい技術についてしれたりはしたのですが、これらはすべて本を読めばわかることであり、考え方のベースとなる新しい概念を提供してくれるものではありませんでした。

このような気持ちから、一年の終わりの専攻を決める段階で、僕はCourse 20(Bioengineering)にすることにしました。この専攻はMITにある最も新しい専攻で、物理学を用いてどのように生物学を根本から説明するか、また生物学に関連する機器をどのように設計するかといった専攻です。このため授業の多くは物理学の授業であったり、プログラミングであったり、機械工学的なラボであったりするのですが、生物学に関して全く新しいアプローチができているように感じます。たとえば蛍光顕微鏡を一から作る授業では毎日のようにラボにこもって設計、組み立て、codingをし続ける日々でしたが、実際に機械が完成したときは何とも言えない感動がありました。

 

しかし二年生の一学期に新たな興味がわいてきました。神経生物学です。もともと高校の時から哲学に興味があった僕にとって、人の考え・理性がどのようにニューロンのつながりから生じているのかを深く知りたいと思うようになってきたわけです。そのような気持ちからCourse9(Brain and Cognitive Science)の専攻も足しました。この専攻は脳の理解を目標に生物学的およびCS的アプローチを学ぶ授業が多く、例えば先学期はシンプルな記憶構造をどのようにニューラルネットでモデル化できるかについての授業があったりしました。ただこの分野においてはまた勉強し始めたばかりなので残り二年でしっかりと身につけていきたいと思います。

 

長くなりましたが、今日はこのくらいで、